考えろ、考えろってどうしたらいいの? 意外と知らない「考える」技術13

ものさしとしてのフレームワーク
ものさしとしてのフレームワークについて述べます。

フレームワークとは、ウィッキペディアによれば、開発・運用・意思決定を行う際に、その基礎となる規則・構造・アイデア・思想などの集合のこと。日本語では「枠組み」などと訳されることが多い、と定義されます。また、ビジネス界で使われる場合は、経営戦略や業務改善、問題解決などに役立つ分析ツールや思考の枠組み。MBAなどで教わるビジネスに必要とされるロジカルシンキングや発想法などを体系的にまとめたもの、と解されています。
有名なものとしては、ポーターの5フォースや事業戦略類型、ボストンコサンルティングが提唱したPPM(プロダクト・ポートフォーリオ・マネジメント)、自社、競合、市場を分析する3C分析などは、すべてビジネスフレームワークにあたります。ある意味、コンサルティング会社や経営学者が提唱する論文は自分が新たに開発したフレームワークの紹介と言い換えても過言ではありません。

フレームワークの有用性と勘違い
フレームワークは非常によく考えられて整理されており、うまく使えば有用なツールであり、是非勉強して使って欲しいと思います。
一方で、フレームワークを使って整理ができた時点で、考えがまとまったと考えてはならないということも強く申しておきたいと思います。さまざまなフレームワークを勉強し、たくさんのまとめを作ってもそれは情報整理の作業にすぎず、そこからどのような仮説を作り上げるのか、結論を導き出すのかという付加価値の情報を作り上げることではじめて自分で考えたということができます。

「考えるヒント」
小林秀雄さんの「考えるヒント」に次のような一文があります。
「考えるとは、合理的に考える事だ。どうしてそんな馬鹿気た事が言いたいかというと、現代の合理主義的風潮に乗じて、物を考える人々の考え方を観察していると、どうやら、能率的に考える事が、合理的に考える事だと思い違いしているように思われるからだ。当人は考えている積りだが、実は考える手間を省いている。そんな光景が到る処に見える。物を考えるとは、物を掴んだら離さぬという事だ。画家が、モデルを掴んだら得心の行くまで離さぬというのと同じ事だ。だから、考えれば考えるほどわからなくなるというのも、物を合理的に究めようとする人には、極めて正常な事である。だが、これは、能率的に考えている人には異常な事だろう」

小林さんの意見に従えば、フレームワークを使って情報整理をするのは、能率的に考えることであって実は合理的に考えていることではありません。フレームワークを使って情報整理されたものは、いわば借り物のものさしを使った状態です。そこに自分なりの価値を付与することが必要となります。自分のものさしを磨き上げることは、考える訓練を繰り返すことではじめて身についていきます。
残念ながら、会社において分析=作業にとどまっていると申し上げたのは、自分のものさしを磨き上げ、結論を導き出すことが放棄されている事例があまりに多いからです。