会計と経済性工学を勉強しよう その5
さらに、前回のケースの続きです。
売上高 1000万ポンド
費用 510万ポンド
利益 490万ポンド
「ひとり70万ポンドにしかならないじゃないか。でも、新しいやつが入るんだったら、とりあえず最初の出資した金の700万ポンドは手をつけずにおいて、この際利益は全部分けちまおうぜ。」とセラーズは別の意見を言った。
「残念ながら、そこまでお金はないんです。」とチャップリンは答える。
「ナニ?おまえちょろまかしたな。」チコは怒りに満ちた顔でチャップリンにつかみかかろうとする。
「それはちょっと違うぜ。」マーフィはすばやい身のこなしでふたりの間に入りながら、チコを制した。そして、続けた。「確かに利益は490万ポンドだけど、船を作るのに先に金をはらっているからなあ。」
このように、利益と実際のお金の収支は違います。お金の収支はキャッシュフローといい、いわば家計簿のようなものと考えればよいと思います。
今回の例でいうと、まず7人が100万ポンドずつ出資しました。それに加えて、1000万ポンドの貿易での収入と船1隻分の保険金が100万ポンド入っています。
一方で、船は合計6隻作っていますから600万ポンド支払っています。あと商品代と船員の賃金、保険料がお金として支払われています。
収入 出資金 700万ポンド
貿易による収入 1000万ポンド
保険金 100万ポンド
合計 1800万ポンド
支出 船代 600万ポンド
商品代 100万ポンド
賃金 40万ポンド
保険料 50万ポンド
790万ポンド
残高 1010万ポンド
出資金をキープするのであれば配分できる資金は310万ポンドです。
チャップリンの提案は利益の半分ですから245万ポンドですから、この分をはらってもまだ65万ポンド残ります。これは現代の会計で言えば内部留保といいます。
もうひとつ重要なことは、利益とキャッシュフローは一致しないということです。また、減価償却費や船の損失(現代の会計で言えば固定資産の除却)といったものは、お金が改めて支出されるわけではありません。このような費用を非資金費用といいます。この辺は以後もう少し詳しく説明します。