会計と経済性工学を勉強しよう その6

株式会社の仕組みは18世紀末からはじまった産業革命で飛躍的に発展していきます。産業革命により、産業の中心となる工場設備や鉄道施設といった固定資産の建設には巨額の資金が必要となりました。多くの人々から資金を集めることができる株式方式は最適なしくみのひとつであり、発展することになりました。

ところで、株式会社の仕組みを利用して集められた資金の大部分は固定資産の投資に使われました。固定資産は長期間に使われますが、永久ではありません。それは年々老朽化していき、やがて使えなくなる日が来ます。それを無視して株主に利益の配当を続ければ会社にはお金がストックされず、買い換えや建て直しの資金が不足してしまいます。しかし、株主に配当しなければ株主は折角出資した資金を回収する機会がなくなりますし、会社の所有者として経営者を代えてしまうこともありえます。経営者としては長期的な視野で会社経営をしていくことが生じてきました。この問題を解決するためには。時間がたつにつれて目減りしていく固定資産の価値と利益を同時に計算できるような、合理的な方法が必要でした。減価償却費はこのような過程で発展しました。

株主と経営は分離され、経営は株主に対し期間ごとに報告する規則もできあがり、複式簿記を土台に会計学が発展したのです。

さて、ここまで読んでいただければわかると思いますが、歴史的には貸借対照表が中心であり、損益計算書オランダ東インド会社で考案されましたが、損益計算書を重要視しはじめたのは最近のことです。しかし、欧米系の上場企業を中心に、株式への損益状況をタイムリーに報告していくという姿勢から四半期決算へと進み、現在では損益計算書の方が重要視されつつあります。

最近の財務諸表のひとつの流れは時価評価です。例えば、土地が良い例ですが、取得した原価で土地の価値は計上されています。しかし、現在の価値で土地を評価すると100倍、1000倍という価値になることも十分あります。株主にとってみると、このような著しく低い資産価値しかないと思って手放したのに、新たな株主がその土地を売って大もうけするというようなことが生じれば不満が残ることになります。デリバティブのように金融の世界の信用取引が思わぬ巨額な負債になるということもありえます。これは2008年に起こったリーマンショックなどがいい例となりますが、このように資産や負債は価値が変わりうる現代を反映し、適宜評価してそれを公表していくことがルール化されてきています。四半期ごとに決算調整という説明がありますが、その中身とは、このようなものが含まれていることを頭の隅においておかれればよいと思います。