会計と経済性工学を勉強しよう その2

前回は概念を説明しましたので、ちょっと具体的な事例でもうけるということをイメージしてみたいと思います。

新大陸が発見され、貿易で一山当てようという輩が集まってきた。
人集めのうまいチャップリン、金儲けには万事抜け目がないチコ、ハーポのマルクス兄弟、金貸し屋のロイド、船大工のマーフィ、船を操れば一番のキートン、力の強いセラーズなど一癖も二癖もある7人組。
新大陸でどうやってもうけるか大騒ぎで打ち合わせ中。

「まず、船だが、4隻は必要だな。」と自慢のしゃべりでヨタ話を早口で長々と脱線しながらマーフィ。
「確かに1隻だと勝手に持ち逃げという心配もあるしな。」意味ありげにキートンを見ながらセラーズが相槌をうつ。
「金がかかるのは、船の建設に400万ポンド。商品の購入に50万。船員たちの賃金や食料に20万。ざっと470万ポンドは必要だな。」と貿易でもうける仲間を集めてきたチャップリンは山高帽の形を整えながら数字を示した。
「航海は3回やるんだろう。それじゃあ2回目と3回目の費用は俺たちが出そう。その代わりもうけは俺たちのもので。」マルクス兄弟のチコは抜け目無く提案する。
「それはずるいだろう。船をただで使おうということか。」すぐさまロイドが反論する。
「でも船は無事に帰ってくるかどうかわからないし。そのときはまた船を作る必要があるだろう。そのときは費用を負担すればおあいこじゃないか。」とチコはいい、ハーポは大きくうなずく。
「それだったら毎航海ごとに25万ポンド払ってくれるなら、わがファミリーで船が天変地異で失ったときは保障するぜ。」とロイドが切り返す。
「ちょっとのハリケーンぐらいびくともせんぜ。3回ぐらいの航海ならちょっと修理すればまだまだ使えるぜ。もっともっと稼げるはずだがな。」とマーフィが自信ありげに言う。

議論は際限なく続き、どうしたら公平に分け前になるかどうかを決めることができた。

まずは、かかる費用だが、
船の建設費 400万ポンド
商品購入  150万ポンド 50万×3回
船員の賃金  60万ポンド 20万×3回
船の保険料  75万ポンド 25万×3回 ロイドの提案を受けることにした

航海が終わったあとの儲けや財産は
1回毎のもうけ 700万ポンド
そして、マーフィの言い分も聞いて航海後も船の価値は40万ポンドは残っているだろうと見積もられた。

まずはすべてのかかる費用を7等分して最初に出資し、1回毎の航海で利益を出し、配分することに決まった。それでは、1回の利益はいくらと計算すればよいだろうか?
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現在の会計風に整理すると下記のようになります。

売上高  700万ポンド

費用   120万ポンド (400万ポンドの船の建設費−船の残存価値40万ポンド)/3
      50万ポンド (商品代)
      20万ポンド (賃金と食料等)
      25万ポンド (保険料)

利益   485万ポンド

これで、いずれ3回も同じ利益になり、7人はリスクを分担することになります。

簡単に寓話風に書くと会計の期間の概念や減価償却費の考え方、残存利益の考え方といったものがどのような構造かを少しイメージできたと思います。