考えろ、考えろってどうしたらいいの? 意外と知らない「考える」技術8

何をイシューとするか
考える上でもっとも重要なキーは何をイシューとするか、言い換えれば論点は何か、あるいはその問題の核心は何かということです。そして、必ず答えを導き出すことが仕事をする上で「考える」ことの大切な点です。

この点を端的に指摘した著書があります。安宅和人氏が著述した「イシューからはじめよ」です。本のタイトルを見たときはまたハウツー本のひとつかと思ったのですが、正直この本を読み始めて全くの誤解であることがよくわかりました。自分が今まで考えてきたこと、部下や若いメンバーに伝えようとしてきたことがわかりやすく記載されていました。

イシューの定義
私が最初のコラムで方程式のように問題を例示しましたが、安宅氏も同様の手法で問題解決を説明されています。ところで、イシューについて、安宅氏は次のように定義をしています。

2つ以上の集団の間で決着のついていない問題
もしくは
根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
の両方が備わっているもの。(25p)

前者の2つ以上の集団の間で決着のついていないというのは、1つの集団の場合、その集団を超える次元で問題を見たとき解決が図れるレベルですが、2つ以上となるとその集団の関係性をさまざま考慮せざるを得ず、問題の複雑性、重要性がそれだけ高いといえます。後者の根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題は、ある意味解決の糸口がついていないHow toで解決するのではなく、問題のWhatまで深く入り込んだ解決を目指すべき問題と言い換えることができると考えます。
そして、問題解決の本質はイシュー度の高いものを質の高い解で解決することだということであり、常にそのマトリックスを意識することが生産性の高い課題解決につながるという指摘です。

問題解決の勉強例で、「ある製品の利益を上げるためには」、という事例でMECEを行い、ロジックツリーを作って、解決方法を提示するものがよく見かけられます。これは手法を理解するために単純化し、理解を挙げるためにさまざまな問題を捨象した状態で、説明がなされています。実際のビジネスでは、このような単純に捨象できるわけではなく、例えば、競合企業の存在が複雑化を増すわけです。あるいは、ある製品に特定化していますが、かけだしの事業は別として、一製品だけのシンプルな事業ではなく、さまざまな製品を展開していることの方が一般的であり、なぜその製品に絞るの?という単純な疑問に答えてもらわないと、はたしてこの問題に考える意味があるのか、という結論にならざるを得ないかもしれません。

整理するためにフレームワークを活用
まずは、このようなカオス状態を脱却するためにビジネススキルであるフレームワークがあり、それを整理することでイシューを浮かび上がらせていくことは可能となります。
しかし、フレームワークを使って整理してもすぐに結論がでるわけではありません。やはり原点は問題が生じていると思われる市場や現場にイシューを特定できる情報があります。
若い皆さんには、小さなことでも良いですから身を持って三現主義が大切と心から実感して話せる経験を是非持ってください。その経験の裏打ちのない知識は残念ながらまだまだ偽物であり、身についたものではありません。

安宅氏の主張

安宅氏の下記の主張は私も同感です。少し長いですが、抜粋させていただきます。

「自分の頭でものを考える」
基本的な知性をもつ人が正しい訓練をすれば、これ自体はそれほど難しいことではない。何事も受身にならず、自分の目で確かめることを基に世界観を作り上げていけばいい。ただ、情報1つひとつの重さや重層性、関連性を認識していないと、必ずどこかで困難にぶちあたる。

論理だけに寄りかかり、短絡的・表層的な思考をする人間は危険だ。
世の中には「ロジカル・シンキング」「フレームワーク思考」などの問題解決のツールが出回っているが、問題というものは、残念ながらこれだけでは決して解決しない。
問題に立ち向かう際には、それぞれの情報について、複合的な意味合いを考え抜く必要がある。それをしっかりつかむためには、他人からの話だけではなく、自ら出向くなりして一次情報をつかむ必要がある。そして、さらに難しいのは、そうしてつかんだ情報を「自分なりに感じる」ことなのだが、この重要性について多くの本ではほとんど触れられていない。

「一次情報を死守せよ」というのは、私の大先輩が授けてくれた珠玉の教えのひとつだ。現場で情報に接するときに、どこまで深みのある情報をつかむことができるか、それはその人のベースになっている力そのものだ。その人の判断尺度、あるいはメタレベルのフレームワークの構築力が問われ、ここは一朝一夕で身につくものではない。知能や学歴は高いが。知性を感じない人が妙に多いのは、この力の重要性が忘れられているためなのではないかと思う。(38−40p)

安宅さんのことをもっと知りたい方は安宅さんのブログを是非訪ねてください。
http://d.hatena.ne.jp/kaz_ataka/

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

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