考えろ、考えろってどうしたらいいの? 意外と知らない「考える」技術1

考えることの悩み
考えるということは日ごろよくやっているようで、じゃあ考えるということはどうやればうまくいくの?と改めて尋ねられると意外と説明するのが難しいのではないでしょうか?会社では分析するということばもよく使われますが、私は同義語と思っています。しかし、こちらも意外とですが、分析を機械的にして結論まで出せない、言い換えれば考えが途中でとまってしまっているという事例が本当にたくさんあります。

例えば、こんな事例です。

ある日部下にひとつの事業の分析を部下に依頼した時のこと。もちろんこちらの期待はこの事業をどのように今後進めていくかを提案してもらうのが期待でした。
最近部下はビジネス書の勉強に目覚めていて、いろいろ蓄積をはじめているようです。

部下:「新製品Xの件ですが、3Cで分析してみました。」
私:「3Cを勉強したんだね。では、報告を聞かせてもらおう。」
部下:「まず、市場ですが・・・・・」
以下、3Cの説明が続きます。そして、3C分析の説明が終わり、報告も終わりました。
私:「よく整理できているよ。でも、この報告の結論は何だったの?」
部下:「3C分析で、新製品Xを整理したことです。」
私:「なぜ3C分析を実施したのかな?」
部下:「有名で有用なビジネスツールですし。皆さんに理解しやすいと思ったものですから・・・。」
私:「それで、新製品Xはどうするの?」
部下:「それはこれから討議して決めていけばいいのではないでしょうか?」
私:「惜しいけど、もう少し考える必要があるね。せっかく分析したのに結論がないのはもったいない話じゃないかな?」

たぶんこれを読まれた上の方は日ごろずいぶん見慣れた事例ではないでしょうか?

私自身もそうだった
私自身もかつてはこの部下と同じで、会社で最初に配属されたR&Dの管理部門でボストンコンサルティングのPPMのビジネス書を読み、会社のある分野の事業のポートフォリオ分析をしたことがあります。分析はできていましたが、何のために分析したのか、踏み込みが浅く、お勉強のための報告になったことを覚えています。
その後少ししてビジネススクールに行く機会を持つことができ、「考える」ということを考え始めたのもこの頃からでした。

考えることの基本は4つ
さて、考えることの基本は次の4つだと私は思っています。

①考える範囲となる条件を明確にすること(いつ、どこで、どの範囲を考えるのか)
②考える対象を明確にすること(何を結論として求めたいのかをはっきりさせること)
③考える対象をはかるものさしを明確にすること
④考える対象に影響を与える条件をはっきりさせ、条件を変えるものと変えないものをはっきりさせること

「考える範囲となる条件」は状況変化によって結果は異なるということで、考える結果も状況次第です。
例えば体重を量るとき、地球上ではどこで量っても結果はほぼ同じですし、条件なんて気にしないですが、月で量れば結果は同じでしょうか?自分が当たり前と思っていることがもし変わっていれば、考える結果は違ってきます。
自分では当たり前と思って考えをはじめますが、人とは条件が違うかもしれません。例えば、山について考えるとき、エベレストのふもとにいるネパールの人と、海抜1メートルのツバルの人では同じでしょうか?

「考える対象を明確に」というのは当たり前ですが、人の意識と言うのは散漫なもので、考える対象=論点を時間の経過により見失うことはよくある話です。今何について考えているのか、常に意識している必要があります。
別に良くある問題は、考える対象を抽象化してしまって、どうとでも考えられるテーマにしてしまうことも、ありがちな姿です。社会保険の問題について考えるというようなテーマで議論すると、意見百出でとりとめのない状況になることは容易に予測できますね。考える上で、いかに結論につながる明確にした対象とできるかどうかが重要で難しいポイントです。

「考える対象をはかるものさし」も非常に大切ですが、この点も意識されずにいることが多いと思います。ものを考えることの基本は比較です。比較によって○とか×とか、多い、少ないとか判断します。ものさしというのは自分が判断している基本です。

そのものさしを意識することが、自分がものごとを考える上でぶれない結果を出していくことにつながります。
ちなみに、世の中にでまわっている経営学フレームワークというのは分析をするのに役立ちますが、これもメジャーしやすいように整理しているのであり、一種のものさしと言えます。どのような条件で、どのようなものさしの尺度でこういったツールを使うのか意識して使って欲しいと思います。

「考える対象に影響を与える条件」ですが、世の中は複雑で変化に富んでいます。結果を導くにはあまりに多くの条件を考える必要があります。
昔勉強した数学の方程式を思い出して欲しいのですが、多次元方程式といっても変数は3つぐらいではなかったでしょうか?(文系出身ですので、理系の方からするともっとという声があるかもしれませんが)
これは変数が増えれば増えるほど答えは無限大に増加していくため、あえて変数を定数化して、少ない変数で物事を考えようとしています。仕事で考えて判断していることも同じことであり、変数を絞って判断をしています。では自分が変数としている項目は何で、定数にしていることは何か普段から意識しているでしょうか?

少し蛇足ですが、経営学ではマトリックス表を作ることが多いと思いますが、あれは二次元の変数です。ものさしで2つに分類すれば解は4つ(四象限)になります。ものさしで3つに分類すれば9つの解(九象限)となります。例えば、この9つの解にさらにもうひとつ変数を加えることで、同様にものさしで3つに分類するとすれば解は3の3乗の27通りにも分類できます。ビジネスの世界で27とおりの解から取るべきビジネスの選択肢をとることは、一般的にしません。結局変数を定数かするか、可能性の低い解はふるい落として選択肢を小さくする努力を行うのが一般的です。

ところで、よく成功体験は復讐するとか、成功体験は失敗のもとと言いますが、これはその当時定数と考えていた条件がいつの間にか変わってしまっているにもかかわらず、過去の定数のままで答えを導き出すことと言い換えてもいいかもしれません。A=1という定数で考えていたものがA=2になれば間違いなく答えは変わります。この点は本当に大切ですが、つい人は過去の慣習に無意識に従う習慣があるようです。

次回から参考になる本や事例をあげながらもう少し詳しく書いていきます。