考えろ、考えろってどうしたらいいの? 意外と知らない「考える」技術12

比較して評価する尺度、基準
前回はものさしとして、いわゆる分類としての手法、共通化と差異化を述べてきました。
今回は比較して評価するという観点から自分なりの尺度、基準をどのようにしていくかという観点から述べたいと思います。

まずものさしとして比較すべきことは、解決すべきイシューや変数とした指標を比較して分析することになります。一般的には代表的な指標、例えば売上高、利益、シェア等を活用することからはじめます。
さらに、突っ込んで比較するとなれば、例えば企業同士を比較するのであれば、業界のベンチマークを活用してその強み、弱みを把握することになります。

切れ味するどい尺度を探して
ものさしを使うときのポイントはできるだけ指標を絞り、切れ味するどいものを比較対象とすべきです。

一例として、法政大学大学院政策創造研究科教授の小峰隆夫氏の「人口変動で国内の変動は縮小するのか」というコラムを参考に上げたいと思います。

小峰氏の論拠は、人口減少で経済が縮んでしまうと言う意見は、必ずしも正確ではなく、成長率や一人当たりGDPにとってはマイナス要因であるが、生産性の上昇に左右し直ちに経済が縮むという結論とならないと主張しています。
その論拠として分析している指標が、「生産年齢一人当たりの生産性上昇率」です。この生産年齢(15〜64歳)の中には、働いていない人(学生や専業主婦)もおり、老年人口(65歳以上)の中に働いている人もいることから、働く人を増やす事ができれば結果的に「生産年齢人口一人当たりの生産性」は上昇することができるわけです。つまり、この論拠は現状の生産年齢で働く人の比率が一定であり、指標上の分母に含まれない老年人口の働く人の増加もないということが前提になっています。

従い、小峰氏は、経済が縮小するという考え方は何もしなかった場合の最低ラインであり、生産性の向上への取り組みを進めていけば経済縮小は起こらないという結論に立っています。そして、人口変動で経済が縮小するというのは一種の枕ことばになっており、意識に刷り込まれてしまっているという警告を発しています。

「人口変動で国内の変動は縮小するのか」日経ビジネスオンライン小峰隆夫の日本経済に明日はあるのか(2012年8月1日)より

切れたものさしは、そのものさしの構成を理解し、その構成が変わることでどのような影響が与えるのかを理解して使うことが大切であり、そこからどうすればよいかという結論まで導き出せる使い方ができれば比較の価値が出ます。

このように自分なりのものさしというのは、必ずしも自分で指標を作るということではなく、指標の意味を理解し、適切な場面で使って今まで常識的に信じられていたものの見方を変える効果として使えたらという点は重要な考え方です。